第3話


フランドール「一週間ぶりに次の階に行くことができました」

美鈴「ていうかもう帰ってもいいと思うんだけどなあ」

レミリア「ほら、3階を進むわよ。ん?どうしたのパチェ」

パチュリー「なんかワンちゃんが通せんぼしているの」

レミリア「なんなのこの犬は。人様にむかって生意気ね」

フランドール「わぁ、可愛いな。首輪と鎖で行動を束縛して家に置いておきたいな」

パチュリー「『ペットにする』という表現を使ってちょうだい、今の発言は咲夜レベルの変態よ」

美鈴「これ飼い犬ですね。首輪してますよ。」

レミリア「やろうっていうのかしら」

パチュリー「でも殺意は感じないわね。この道を行かず別の道を行け、って言ってるように見えるわ」

フランドール「人間様は生態系の頂点だけど、今回は折れてやるか」

美鈴「まああたしら人間ではないですけどね。あ、今度は人間がいますよ」

パチュリー「さっきのワンちゃんは彼のだったのね」

フランドール「そういえばペットを冒険に連れていく冒険者もいるって聞いたことがあるな」

美鈴「彼から磁軸の柱について教えてもらいました。親切な人でよかったですね」

レミリア「ちょっと小馬鹿にされている気もしたけど」

美鈴「それはお嬢様の心が狭いからですよ。」


レミリア「3階の敵は堅いのが多いわね。瞬殺できなくてイライラするわ」

フランドール「硬くはないけど『オオテントウ』がすごく面倒。敵全員のAGI上げるせいでこっちの攻撃が当たらなくなるし、ラスト一匹になるとでかい花呼ぶし。」

パチュリー「『ラフレシア』ね〜。でも稼ぎにはいいんじゃない?そこそこ倒せるようになったし」

美鈴「採掘中にいきなり現れるよりはマシですからね。あと装備面なんですけど斧や銃や弓はやたら強いのが売られているのに何で剣や鞭はないんですかね?」

フランドール「このメンバーが装備可能なのは『剣・鞭・杖』だからどれも使えないな」

パチュリー「杖は強い『マイマイクラブ』が売られてるけど、後衛のあたしが装備してもね〜」

フランドール「あっ、いま宝箱の中に『ボアスピアソード』があったよ!!美鈴さん装備してね」

レミリア「あらよかったわね。ありがたく受け取りなさい。」

美鈴「装備より休暇が欲しいです」

レミリア「ぶつくさ言わないで進むわよ」

フランドール「あれ、さっきの人が門の前に立ちふさがっているよ?」




パチュリー「えっと、なんか大公宮に話を聞いてこい、それまでここは通さないとのことみたい」

フランドール「ええ〜、せっかくここまできたのに面倒くさいなあ。こいつ張ったおして先に進もうよ」

美鈴「いえ、彼はかなりできますよ。多分この4人でも敵わないでしょう。引き返した方が賢明です」

レミリア「なによ急に。フランの言う通りまたここまで来るのは骨が折れるわよ」

美鈴「大丈夫ですって、いったん帰っても磁軸の柱で入口から直で3階に行けますし、抜け道もあるのでそんなに時間はかかりませんよ」

レミリア「……惚れたの?」

フランドール「うわっ、そういうフラグかよ。」

美鈴「何言ってるんすか。男にも女にも興味はありません」

パチュリー「その言い方はどうなのよ」

レミリア「いや、でもなんか必死だし、目が泳いでいるし」

美鈴「あんたらにあたしのなにが分かるってんだ!ここんとこ毎日じめじめして臭い森ん中入らされてほぼ作業な肉体労働を気が触れている連中と行わされている毎日!!そんな中あんなまともな人に出会えばそれなりの愛着もわくっつーの!!つまりあたしは正常だゴミムシ共が!!」

フランドール「あっはっはっは美鈴さんがキレてる〜」

パチュリー「よっぽど鬱憤がたまってたのね〜」

レミリア「美鈴はあとでボコるとして、一度帰りましょう。その大公宮とやらに話をつければいいだけの話でしょ?」

フランドール「は〜い」


フランドール「大公宮に行ったらミッションが出たよ。3階で衛士が行方不明になって、それを探してほしいんだって」

レミリア「これはいいわね。ここで恩を売っておけばあとあと有利だわ」

美鈴「他の冒険者が解決するのを待ちましょうよ。行方不明事件とかマジめんどくさいです」

フランドール「でもだったら何でフロースガルさんが何とかしないんだろ。一大事じゃん」

パチュリー「意外とビビりなんじゃない?」

美鈴「彼はそんなんじゃないです!!」

パチュリー「はいはい」


レミリア「というわけで行かせてもらうわよ」

パチュリー「彼の話では鹿さんが暴れていることが原因みたい」

美鈴「ま、サクッと終わらせて帰って見せますよ」

フランドール「開けるよ……」

美鈴「フロースガルさんの馬鹿ああああああああ!!グロ画像があるなら先に言ってくれよおおお!!」

フランドール「あはははははははは!!<<自主規制>>がいっぱ〜い!!うわっ、あそこの<<自主規制>>、<<自主規制>>が<<自主規制>>に<<自主規制>>してる〜!!あはははははははははははは!」

パチュリー「放送禁止用語を並べないで」

レミリア「死体を見るのは初めてじゃないけどこんな光景は見たことないわ」

美鈴「はやくミッションをクリアして、衛兵に片づけてもらいましょう?」

パチュリー「このメンバー、人を人とも思ってないわね〜」

美鈴「この道の向こうから人の気配がします。」

パチュリー「でもなんか到底勝てなさそうな鹿さんが道をふさいでいるわ」

レミリア「勝てるかどうかなんて、やってみなきゃ分からないでしょ?」

美鈴「現実世界では、やってみてだめだったら死ですよ?」

フランドール「できるだけ、手を汚さない方向でいこう」

パチュリー「それをいうなら『無駄な戦闘は避ける方向』でしょ?ここで大公宮からもらった『引き寄せの鈴』の出番ね〜ああいう敵を鈴を鳴らした場所までおびき寄せてくれるのよ〜」

レミリア「その通り。さあフラン、お願いよ」

フランドール「よし、この鈴を鳴らして……鳴らないよ?」

パチュリー「ちょっと見せて……ああ〜っ!!この鈴中身が粉々になってる!!」

美鈴「え?何でですかね?粗悪品でもつかまされたんですかね?」

フランドール「でももらった時はちゃんと音が……もしかして、またやっちゃったかな」

パチュリー「ああ、『全てを破壊する程度の能力』!!発動しちゃったのね」

レミリア「あはっ、今回の残念賞はフランね」

美鈴「しゃあないですね、いったん帰りましょう」


咲夜「なるほど、その獣を退かす手段がない、と」

フランドール「あうう……ごめんなさい〜」

パチュリー「なんとかならないかしら〜」

咲夜「3階で採取できる『鈴の実』を交易所に売れば、また『引き寄せの鈴』が手に入りますが」

パチュリー「採取できる人がいないわ〜」

レミリア「こないだ捕まえたシモベ共に取らせに行くのも面倒ね」

咲夜「ならばフランドール様、スキルポイントはお余りですか?」

フランドール「余ってるけど?」

咲夜「それでは『誘いの足音』に1ポイント振ってください。これは『引き寄せの鈴』と同じ効果を持つスキルです」

フランドール「へえ、そんなのあったんだ」


パチュリー「じゃあテイク2ね。準備はいい?」

フランドール「うん、行くよっ!!」

フランドール「誘いの足音!!」

美鈴「うわっ!!こっち来た!!」

レミリア「今よ!あの道に入るわ!」

フランドール「やたっ!」

美鈴「これで汚名挽回ってやつですね」

フランドール「えへへ」

パチュリー「えーと、この奥を進んで……」

フランドール「生き残りは一人だけだったみたい」

パチュリー「気の毒ね……」

美鈴「自分の仲間がどんどんやられていくって、どんな感じなんだろう」

レミリア「大丈夫よ美鈴、あなたにそんな思いはさせないわ」

美鈴「お嬢様……?」

レミリア「だって、ウチで始めに死ぬとしたらあなただから」

美鈴「そういうオチかよ……クソッ」

パチュリー「まあ、そういう冗談を言える関係って、大事よね」

フランドール「無理やりいい終わり方にしなくていいから」


フランドール「ただいまっ!ありがとう咲夜さん!なんとかなったよ」

咲夜「それは何よりですフランドール様」

パチュリー「そういえば咲夜、何でフランに『誘いの足音』を覚えさせたの?レミィも覚えられるでしょ?」

レミリア「フランに見せ場を作ってあげたんでしょ?」

咲夜「いえ、ヒールの音をサディスティックに鳴らすのはレミリアお嬢様の方が絵になると思ったのですが、フランドール様が鳴らすのもまたオツだと思いまして。あっフランドール様、後で背中を……踏んでください」

フランドール「Sとかそういうの関係なく踏みつぶしてやりたい」

レミリア「やめときなさい。喜ぶから」


次回へ続く


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