「さあ着いたわよ。ここがハイ・ラガード。」
「うわあ、おっきな樹。下から火を点けたら凄くよく燃えるだろうなあ。」
「頼むから着くなり物騒な発言はやめなさい。」
「わたしこういうところすっごく好きよ。風も気持ちいいわねえ」
「まあ別にいいんですけど、何でこんな僻地に?」
「ふふっ、よく聞きなさい。この樹は世界樹と呼ばれていて、空飛ぶ城へとつながっているという伝説があるの」
「うわっ、くだらね。帰っていいすか?」
「あなた少しは忠誠心を持ったほうがいいわよ」
「そして最近、あの樹の中に巨大な自然の迷宮が見つかったのよ」
「まあ、素敵なお話ねえ」
「なんでそんなものが樹の中に……?」
「ハイ・ラガードの大公は、その迷宮を調べて空飛ぶ城の伝説の真偽を確かめるために全国に触れをだしたの。
するとこの国に世界中から冒険家が集まってきて……」
「ちょっと待て。まさかお嬢様、あたしらでその迷宮を」
「踏破するつもりよ?」
「ぎゃあああああっ!!何考えてるんですかこの糞ロリータがああぁ!!
そんな法律外労働はRPGの主人公のようなマゾヒストに任せればいいのに!!なにが悲しくて一般ピープルのあたしがそんな……あーあ。」
「美鈴、あんまりこのHPの存在意義をボコボコにする発言は控えなさいよ」
「腹立つわね。空飛ぶ城や謎の迷宮ロマンに酔いしれているわたくしを否定するの?」
「ネットで妄想小説でも書いていればいいだろコウモリ野郎!!」
「パチェ、フランドール、あななたちはどう思う?」
「弾幕ごっこは最近ちょっと飽きたとおもっていてて、ちょうどいいわ。経験値稼ぎとは名ばかりの生物虐殺も楽しそうだし」
「面白そーじゃない。なーに心配ないわよ〜。レミィもフランも十分強いし。へっちゃらへっちゃら」
「だめだ……みんな狂ってる」
「どっちにせよついてこなければクビだけど?」
「ああこれが腐りきった社会の現実かぁ。どんな理不尽なこと言われても生活のためにお上には逆らえず、毎日奴隷のような日々を過ごす運命……」
「ついこないだ『居眠りスタンプカード』のスタンプが100個溜まったあなたが言うかあ?」
「ほら、ちゃっちゃと街に入るわよ」
「そういえば咲夜さんは?」
「気持ち悪いから置いてきた。」
「ふぇ?」
「彼女おかしいのよ。わたくしの洗濯物の匂い嗅いでるし、わたくしの食べ残しをおいしそうに食べるし。」
「あたしは『次さぼったらお尻ペンペンの刑』だと満面の笑みで言われました。」
「こないだあたしの写真にチューしてたわぁ……知らないふりでごまかしたけどドン引きしたわ〜」
「でしょ?あんな変態と人の少ない樹海に行ってみなさい。咲夜祭りが始まるわよ」
「そんな!!咲夜さん、たしかに変だけど何でもできるし、器用だし、強いし、連れてきたら絶対頼りになるのに!!
第一、可哀そうだよ!!」
「フランは本当に優しい子ね」
「でもどこか間違っているのよねこの子は。ところでみんな?」
「何でわたくしたちのギルド名がすでに決まっているわけ?」
「わたくしめが、付けさせていただきました。」
「うわあああああああぁっ!!」
「何で?何でアナタがここにいるのよ!!
確か目隠しと耳せんをつけて椅子に鎖でぐるぐる巻きにして3人がかりで100キロの鉄球を両足にくくりつけておいたのに!!」
「そんなことをしたの!!」
「お言葉ながらお嬢様。あの程度の拘束、私めにかかれば造作もありません。むしろ気持ちがよかった……」
「ゲフゲフッ」
「……まあ来ちゃったものは仕方がないわね。咲夜。アナタには宿屋での待機、必要品の買出し等、わたしたちの冒険の全面的なバックアップを命じるわ。」
「大変光栄でございます。かしこまりましたお嬢様。」
(雑用を押し付けるとはやるわねぇ……)
(咲夜はハブられているのに気づいてないのか……)
「ところでこのギルド名は?何よ『クリムゾンリリィ』って」
「はい。これは我々にぴったりのギルド名です。『クリムゾン』は紅色、そして『リリィ』は百合。紅魔館の淑女同士が恋人のように仲良くなれるようにと」
「『百合』とかいれるなあああああああああ!」
「周りに誤解されたらどうするのよ!!」
「ねぇ、フラン様。気持ち悪いでしょ?」
「……うん」
「というわけでうるさい咲夜を宿屋に押しつけて」
「いよいよ冒険のはじまりってわけね」
「ああ帰りたい」
「お姉さま、このまま行って平気なの?装備とか薬とかスキルとか」
「そうね、じゃあ最強の装備をそろえて、薬も大量に買っておきましょうか。」
「金あるんすか」
「パチュリー、出して」
「お小遣いくらいしかもってないわよ〜」
「あたしもですよ。」
「……帰りにお菓子買おうと思って……それしか」
「はあ、何考えてんの?ふだんからそれなりのお金くらい持っておきなさいよ。わたしはアナタたちを当てにしていたから無一文よ?気高き吸血鬼は財布なんて持ち歩かない……なによ、みんなこっち見て」
「お前に計画性はねえのか!!」
「レミィのばかたれ!!自分で金庫から引き出してきなさいよ!!」
「何!?わたし何か間違った?」
「ま、まあお姉さまは後でボコボコにするとして、とりあえずみんなで出し合って、なんとかしようよ」
(←本気で分かってない)
「みんな合わせて……500enぽっち。500enぽっちとか」
「500en?それってどれくらい?天空の剣とかエクスカリバーが10本は買えるわよね?」
「買えるわけねぇだろ!!鋼の剣だって怪しいよ!!だいだいどっちも非売品じゃねえか」
「んもう、レミィったら普段買い物しないからそういう感覚が弱いのね」
「いっつも咲夜にまかせっきりだからなあ……」
「呼びましたね?」
「呼んでない!」
「そうですか、お嬢様の『困った電波』が届いたもので」
「ゲフゲフゲフッ」
「本当に困っているのよ咲夜〜樹海に挑みたいのに資金があまりないの〜」
「分かりました、私めが決めて差し上げましょう。まず、皆様のジョブが……」
レミリア | ダークハンター | 前衛。縛りや異常などの特殊攻撃に特化。 |
フランドール | ダークハンター | 前衛。上に同じ。 |
メイリン | パラディン | 前衛。防御と守護に重きを置いたジョブ。 |
パチュリー | アルケミスト | 後衛。属性攻撃型。 |
「他の3人はなんとなく分かるとして、なんであたしがパラディンなんですか?」
「華麗に攻めるのはわたしの役目。アナタはせいぜい盾として頑張れってことよ」
「……クソが」
「とすると前衛が3人に後衛が1人か……それではバックラー、厚手の手袋を3つずつ買って、あとメディカを5つほど買っておきましょうか。そしてスキルと一緒に装備、と…」
レミリア | ダガー | STRブースト レベル3 |
フランドール | ダガー | STRブースト レベル3 |
メイリン | ダガー | 全力逃走 レベル1 |
パチュリー | ワンド | 炎マスタリー |
「武器はいいの?」
「STRブーストの効果で何とかなるでしょう。序盤はレミリア様もフランドール様もスキルを使うことはないのでこれでいいはずです。それにこのチームは回復スキルが使えないので、回復アイテムを多めに買っておいたほうがよいです。申し訳ありませんが、資金の関係上、パチュリー様は防具はしばしお待ちください」
「まあ後衛はそんな攻撃とんで来ないもんね、ダメージも軽減するし。」
「美鈴はとりあえず安全に逃げるために全力逃走、あと敵の的になるための挑発を入れておきました。プレイヤーが使ったことがないそうなので効果のほどはわかりませんが」
「逃げにオトリか、テンション下がるなあ」
「やっぱり咲夜さん連れて行こうよ。お姉さまと違ってちゃんと考えてるよ。大体パーティー5人まで組めるんでしょ?」
「だからこうやって参謀となってもらうのよ。」
「咲夜さん連れていくくらいなら一人で樹海に突っ込んだ方がマシです」
「う〜みんなおかしい。死ねばいいのに」
「咲夜が好きなの?」
「あんまり」
「さて、準備も整ったことだし、樹海に……」
「あ、先にラガード公宮へお向かい下さい。どうやらここではこの国の公国民として認めてもらえないと樹海に入れてくれないそうです。」
「あらそうなの。まあいいわ。顔を合わせておきますか」